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ヒトがヒトたる所以

 

 

ミケランジェロがバチカンのシスティーナ礼拝堂の天井に描いた『天地創造』。その作品中に密かに込められたと言われる、秘密のコードとして知られる『脳』の絵がある。

 

 

人間は昔から脳の何たるかを追求しようとしている。その未知なる世界はすべてが解明されているわけではなく、今もなお研究され続けている。

 

そして、別に研究者や芸術家じゃなくても、『認知症にはなりたくない』と思い『自分の脳は大丈夫か?』と気になったり、テスト勉強をしながら『どうしたら早く大量に物事を脳に記憶できるか』なんてテスト勉強そっちのけで真剣に考えてみたり、あるいは『恋愛の最中で悩んで頭がおかしくなる』なんて言いながらドーパミンなどの脳内物質をバンバン分泌していたりする。このように大なり小なり多くの人が、脳に対する興味を持つきっかけを経験している。

 

記憶、思考、感情、意識、知覚、運動、言語…それらを司っているのが脳であり、それらの機序について判明していることも多いが、学べば学ぶほど難解で未知な部分も多く、一方で脳の神秘性に気づいた時、得をしたような驚きや感動がある。

 

因みに昨年の雑誌サイエンスに、とある論文が掲載された。(タイトル:Human-specific ARHGAP11B increases size and folding of primate neocortex in the fetal marmoset, DOI:10.1126/science.abb2401)

 

チンパンジーには無くヒトにだけ存在する特異的な遺伝子(ARHGAP11B)を猿(コモンマーモセット)に導入したという内容の論文だ。親のマーモセットのお腹の中で、ARHGAP11Bを持っている胎児のマーモセットを育てたところ、胎児の脳のシワが増えたことが確認された。ある意味 人間化したマーモセットを作成したとのことから、倫理的問題を考慮し、胎児の発育途中で帝王切開により胎児を取り出し、データのみ解析されたというもので、その解析結果が掲載された。

コモンマーモセット(web猿図鑑より)

 

 

衝撃的・・・。

 

 

『ヒトがヒトたる所以』について思いめぐらせてくれる内容の論文である。既に6年前にヒト特異遺伝子ARHGAP11Bが発見されていたことにも感心するが、この論文はさらに前進し、ヒトの進化の過程を論じるにまで至っている。

 

天才ミケランジェロは神が人間に知能を与えたことを『天地創造』の絵に込めたとされているが、仮にミケランジェロがこの論文を読んでいたら、どんな『脳』の絵を描いていただろうか。

 

 

2021年06月28日